次から次に生み出される新商品とアンティークとの決定的な違いは、
出会えるか、出会えないかの違いにあると思う。
ようやく部屋も決まり、少しずつではあるが、
自分の好きな物や家具で飾っていけたらと思い、
毎週のようにいろんな蚤の市や、ブロカントに足を運ぶが、
このタイプのこれといった物になかなか出会えないでいる。
もちろん価格との問題もあったりもするが、
ぜったい妥協せずに集めようと思っているので、
余計に範囲が狭くなっているのは確かである。
そう言えば、昨日、車でお花を配達していて、
マレ地区の細い路地を走っていたら、無印良品があった。
ウィンドウには、あの無印独特の、どの部屋にでも合いそうな色、形のミニソファーが
ディスプレイしてあった。
値段もまあそれなりに手頃である。
なかなか恋が出来ないでいるときに、ひょっとしてこの人かもと、
少し心が揺らいでしまう、そんな感じである。
実は、この後に、人生を180度変えられてしまうような出会いが待っているのに、
今抱きしめてもらいたいと思っている心をぐっと我慢できずに、
フラっと、行きずりの恋に落ちてしまいそうになる、それである。
ぼくは、ぐっと我慢して、無印の前を立ち去り、
そして、今日日曜日も、部屋に合いそうなアンティークの恋人を探している。
昼から雨が降りそうなので、朝一番に洗濯、掃除、買い物を済ませて、
その足で近くのクリニャンクールに来た。
すごいkicaさんみたいな雰囲気のお店があったので入ってみた。
お店を見て回っていると、本当にkicaさんにいるような感じになってきた。
ところどころ奇妙な人形の腕だけのコーナーとか、
足だけの箱とか、キューピーちゃんみたいな人形の頭だけとかを飾っていて、
おそらくそれがかわいく落ち着かせないスパイスになっているようにも感じた。
外の路地にも、きれいに陳列された雑貨の盛られた木箱、ブリキ箱がたくさんあった。
ふと、レジ脇のアンティーク棚の端っこに、エッフェル塔のモチーフが彫られた蓋の、
ちいさなアクセサリーケースを見つけた。
かわいすぎず、おとなしすぎない箱のフォルムと、大人っぽい焦げ茶の色が
何とも言えない色っぽさを醸し出していた。

一目惚れをしたので、早速交渉して、10ユーロまけてもらい、購入した。
家の鍵が、行き先がなく、テーブルに転がっていたので、
ようやく家を見つけてあげられた。
さて、話は全然かわるが、
ジョニー:デップが愛の貴公子を演じた1995年の作品、「ドンファン」のなかで、
このロマンスの男、ジョニー:デップが名言を吐く。
「天で生まれた魂が何かのはずみでふたつに割れ、
大空を流れて落ちる。
そして離れ離れになった魂が地上で再びひとつになる。
それが ”一目惚れだ”」
まったく同じ事を、どの恋愛でも感じてきたが、
それなら落ちる際にふたつではなく、無数に割れてしまったということか。
ということは、まだまだ割れた魂に出会う可能性もたくさんある。
そんな事を考えながら、地下鉄の窓越しに見えたすてきな女性にも
小さな運命を感じてしまう今日この頃である。